6月に届く住民税の決定通知書を開いて、「なんでこの金額?」と手が止まった経験はないでしょうか。給与明細から毎月引かれているのに、計算の中身はほとんど説明されないまま。私も自分の通知書と源泉徴収票を並べて電卓を叩いて、ようやく仕組みが腑に落ちました。

この記事では、住民税の計算をステップ1から順に追い、年収400万円の会社員を例に実際の金額を出します。横浜市・川崎市・福岡市など自治体ごとの違いがどこで出るのか、保育料の判定に使われる金額はどれか、2026年度に向けて注意すべき点もあわせて整理します。
住民税は「所得割」と「均等割」の合計
まず全体像から。住民税(個人市町村民税・道府県民税)は、次の2つの足し算です。
| 区分 | 内容 | 標準的な扱い |
|---|---|---|
| 所得割 | 前年の所得に応じて課税 | 標準税率は合計10%(市町村6%・道府県4%) |
| 均等割 | 所得にかかわらず定額 | 標準額は合計5,000円(市町村3,000円・道府県2,000円) |
これに加えて、2024年度から「森林環境税」(国税)1,000円が住民税と一緒に徴収されています。通知書では均等割の欄の近くに並んで印字されるので、合計で年6,000円前後を見ることになります。
もうひとつ大事なのが、住民税は前年の所得に対してかかるという点。2026年6月から納める住民税は、2025年1月〜12月の所得がもとになります。退職した年の翌年に請求が来て驚く人が多いのは、この時間差のせいです。
ステップ1:課税所得を出す
計算の出発点は年収そのものではありません。順番はこうです。

- 収入 − 給与所得控除 = 給与所得
- 給与所得 − 所得控除(基礎控除・社会保険料控除・扶養控除など)= 課税所得
給与所得控除は収入に応じた段階制で、年収162.5万円以下なら55万円、それを超えると計算式で増えていきます。源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」がそのまま使えるので、自分で計算する必要はありません。
ここで注意したいのが、住民税の所得控除額は所得税と微妙に違うこと。たとえば生命保険料控除の上限は所得税が12万円に対し住民税は7万円、扶養控除(一般)は所得税38万円に対し住民税33万円です。基礎控除も所得税と住民税で額が異なります。この差を無視して所得税と同じ数字で計算すると、答えが数千円〜1万円ずれます。よくある失敗の筆頭です。
なお基礎控除の額は2025年の税制改正で見直しが入っており、年度によって扱いが変わります。2026年分の具体額は、お住まいの自治体サイトか国税庁の最新情報で必ず確認してください。
ステップ2:所得割を計算する
課税所得に10%を掛けます。そこから税額控除(調整控除、住宅ローン控除の残り、ふるさと納税の寄附金税額控除など)を引いた額が所得割です。
調整控除は、所得税と住民税の人的控除の差額を埋めるための仕組みで、課税所得200万円以下なら小さいほうの5%が控除されます。金額は2,500円〜数千円程度。自動で計算されるので申告は不要ですが、通知書に必ず載っているので目を通しておくと検算ができます。
ステップ3:均等割を足す
所得割に均等割と森林環境税を加えて、年税額が確定します。給与天引き(特別徴収)の場合は6月〜翌年5月の12回に分割。100円未満の端数は6月分にまとめられるため、6月だけ金額が大きいのはバグではありません。
実例:年収400万円・独身の会社員
概算で追ってみます。社会保険料は年収の約15%と仮定しました。

| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 給与収入 | 4,000,000円 |
| 給与所得控除後 | 約2,760,000円 |
| 社会保険料控除 | 約600,000円 |
| 基礎控除(住民税) | 430,000円 |
| 課税所得 | 約1,730,000円 |
| 所得割(10%) | 約173,000円 |
| 調整控除 | 約▲2,500円 |
| 均等割+森林環境税 | 6,000円 |
| 年税額 | 約176,500円 |
月あたりおよそ1.4万円強。実際には控除の内容や自治体の税率で前後するので、あくまで桁感の確認用と考えてください。
横浜市・川崎市・福岡市…自治体で金額は変わるのか
「横浜市は住民税が高い」といった話をよく聞きますが、所得割10%・均等割5,000円という標準は全国共通です。差が出るのは、独自の上乗せや超過課税を条例で定めている自治体がある場合。
たとえば横浜市には「横浜みどり税」という独自財源があり、その分だけ均等割相当が上乗せされます。神奈川県も県独自の水源環境保全税を課しています。名古屋市のように市民税所得割を減税している例もあります。
ただし率直に言えば、この差は年間数百円〜千数百円の世界です。川崎市・福岡市・世田谷区・札幌市・広島市・吹田市のどこに住んでいても、住民税の大部分は同じ計算式で決まります。引っ越し先を住民税で選ぶ意味はほぼありません。自分の自治体の正確な額を知りたいときは、市区町村サイトの「個人住民税の税率」ページを見るのが最短です。多くの自治体が試算シートやシミュレーターも公開しています。
保育料の判定に使われるのはどの金額か
保育料は所得割額で決まります。年収でも課税所得でもなく、通知書に載っている市町村民税の所得割額(6%部分)です。
ここで見落としやすいのが、保育料の判定では住宅ローン控除やふるさと納税の税額控除を適用する前の所得割額を使う自治体が多いという点。「ふるさと納税をたくさんしたのに保育料が下がらない」という相談はこれが理由です。逆に、iDeCoの掛金は所得控除なので課税所得そのものを下げ、保育料の階層に効いてきます。
もうひとつ。保育料の切り替えは毎年9月です。4月〜8月は前々年、9月〜翌3月は前年の所得が使われるため、年度途中で保育料が変わることがあります。
よくある間違い3つ
- 住民税が「今年の収入」にかかると思っている。かかるのは前年分です。
- 所得税の控除額をそのまま住民税に当てはめる。控除額は制度ごとに異なります。
- 退職後の請求を想定していない。退職翌年に前年分の請求が来るので、手取りが減る時期と重なります。転職の谷間がある人は、この分を別に取り置いておくと安心です。

よくある質問(FAQ)
Q. 2026年の住民税の計算方法は変わりますか?
A. 基本の枠組み(所得割10%+均等割+森林環境税1,000円)は維持される見込みですが、基礎控除や扶養控除の額は2025年の税制改正で見直しが入っており、年度によって適用額が変わります。実際に納める金額を確認するときは、お住まいの市区町村の最新の案内を参照してください。
Q. 住民税がかからないのはどんな場合ですか?
A. 一定の所得以下であれば、所得割・均等割ともに非課税になります。基準となる金額は扶養親族の数と自治体の級地区分によって変わるため、単身と子育て世帯では境目が異なります。ご自身が該当するかは市区町村の非課税基準のページで確認してください。
Q. ふるさと納税をすると住民税はいくら減りますか?
A. 自己負担2,000円を除いた寄附額が、所得税の還付と翌年度の住民税の控除に分かれて戻ってきます。控除の大部分は住民税側で処理されるため、6月の決定通知書の「寄附金税額控除」欄で反映を確認できます。ただし控除には年収と家族構成に応じた上限があり、超えた分は戻りません。
まとめ
住民税は「前年の課税所得×10%+均等割」という一本の式で決まり、自治体差はごくわずか。手元の源泉徴収票と決定通知書を並べれば、自分で検算できます。