
年末調整を出したのに、確定申告も必要と言われる理由
12月に会社へ書類を出して、これで税金の手続きは終わったはず。なのに医療費やふるさと納税を調べていたら「確定申告が必要」と出てきて、手が止まった——そういう人は多いです。この記事では、年末調整と確定申告の違いを「誰が・どこまで精算するか」という一点から整理し、会社員でも両方必要になる代表的な7ケース、実際の手順、そして申告のときに一番多い失敗までまとめます。読み終えれば、自分がどちらをやるべきか判断できます。
結論を先に言うと、両者は対立する制度ではありません。年末調整は勤務先が代わりにやってくれる簡易版の精算で、確定申告はその漏れを自分で埋める本体の手続きです。
ステップ1:まず「誰がやるか」の違いを押さえる
| 項目 | 年末調整 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 手続きする人 | 勤務先(会社) | 自分 |
| 対象者 | 給与所得者(一定の条件を満たす人) | 申告が必要・したい人すべて |
| 時期 | 書類提出は10月下旬〜11月、精算は12月または1月の給与 | 翌年2月16日〜3月15日(土日等にあたる場合は翌開庁日) |
| 対象になる所得 | その勤務先から受ける給与のみ | すべての所得 |
| 精算のされ方 | 給与に上乗せ/天引きで還付・徴収 | 納付、または指定口座へ振込で還付 |

ポイントは、年末調整が見ているのは「その会社の給与だけ」だということ。副業も、他社の給与も、医療費も、会社は把握していません。だから漏れる。その漏れを拾うのが確定申告です。
ステップ2:年末調整では処理できない控除を知る
ここが分かれ目です。控除には、会社に紙を出せば済むものと、自分で申告しないと絶対に反映されないものがあります。
| 控除・制度 | 年末調整 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 生命保険料控除・地震保険料控除 | 対応可 | 不要 |
| 社会保険料控除・iDeCo(小規模企業共済等掛金控除) | 対応可 | 不要 |
| 扶養控除・配偶者控除 | 対応可 | 不要 |
| 住宅ローン控除(2年目以降) | 対応可 | 不要 |
| 医療費控除・セルフメディケーション税制 | 不可 | 必要 |
| 寄附金控除(ふるさと納税など) | 不可 | 必要(ワンストップ特例が使えれば不要) |
| 住宅ローン控除(1年目) | 不可 | 必要 |
| 雑損控除(災害・盗難など) | 不可 | 必要 |
なお2026年(令和8年)分の年末調整は、基礎控除や給与所得控除の見直し、特定親族特別控除、23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除の特例など、改正の影響で申告書の様式そのものが変わっています。控除額の細かい数字は年によって動くので、記入前に国税庁の年末調整の特集ページ(https://www.nta.go.jp)で最新の様式と金額を確認してください。
ステップ3:両方必要になる7つのケース
- 医療費が家族合計で年10万円を超えた(総所得金額等が200万円未満の人はその5%)
- ふるさと納税の寄附先が6自治体以上、またはワンストップ特例を申請していない
- 住宅ローン控除の1年目
- 給与以外の副収入があり、所得(収入−経費)が20万円を超えた
- 給与の収入金額が2000万円を超える(そもそも年末調整の対象外)
- 2か所以上から給与をもらっている
- 年の途中で退職し、年内に再就職していない

「両方必要」と言っても、年末調整をやり直すわけではありません。年末調整の結果が載った源泉徴収票を土台にして、そこに足りない分を確定申告で足す。これだけです。
ステップ4:実際の手順と、かかる時間
準備物は、源泉徴収票、マイナンバーカード、還付先の口座番号、そして控除の証明書類(医療費の領収書、寄附金受領証明書、住宅ローンの年末残高証明書など)。

作成は国税庁の確定申告書等作成コーナーが標準的です。画面の案内に沿って源泉徴収票の数字を転記し、控除を入力して、マイナポータル連携またはICカードリーダーでe-Tax送信。医療費控除だけなら、領収書の集計が済んでいれば30分から1時間程度で終わります。還付金の振込は、e-Tax送信からおおむね3週間前後が目安です。
よくある間違い
一番多いのが、ふるさと納税のワンストップ特例まわりです。ワンストップを申請していても、確定申告をした時点でその申請は無条件で無効になります。医療費控除のために申告したら、ふるさと納税の分まで自分で書き直さないと寄附控除が丸ごと消える。これは本当によく起きます。申告書には、その年に寄附した全額を必ず記載してください。
もうひとつ。医療費控除は領収書の提出こそ不要になりましたが、「医療費控除の明細書」の作成は必要で、領収書は5年間の保存義務があります。捨てないこと。
率直に言うと、還付額が小さいなら無理にやらなくてもよいと思います。医療費が11万円だった場合、超過分は1万円。所得税率5%の人なら還付は所得税と住民税を合わせて1500円程度です。領収書を一日かけて仕分けする価値があるかは、人によります。一方、住宅ローン控除の1年目だけは金額が桁違いなので、これは絶対にやってください。
よくある質問(FAQ)
Q. 年末調整で生命保険料控除を出し忘れました。もう手遅れですか?
A. 手遅れではありません。確定申告(還付申告)をすれば控除を受けられます。還付申告は対象となる年の翌年1月1日から5年間できるので、過去の分もさかのぼって取り戻せます。
Q. 確定申告をすると、年末調整の結果は無効になりますか?
A. 無効にはなりません。確定申告は年末調整の結果を引き継いだうえで、追加の所得や控除を反映して税額を計算し直す手続きです。ただし、ふるさと納税のワンストップ特例だけは確定申告によって無効になるため、寄附分を申告書に記載し直す必要があります。
Q. 副業の所得が20万円以下なら、本当に何もしなくていいのですか?
A. 所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は別途必要です。20万円以下でも自治体への申告義務は残るため、お住まいの市区町村の案内を確認してください。医療費控除などで確定申告をする場合は、20万円以下の副業所得も申告書に含める必要があります。
まとめ
年末調整は会社がやる給与だけの簡易精算、確定申告は自分がやる全所得の本精算であり、医療費控除やふるさと納税、住宅ローン1年目など会社が把握できない事情がある人は、両方をつないで初めて税額が正しく確定します。