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退職金の税金はいくら?退職所得控除の計算と手続きを実例で解説


退職金の税金はいくら?退職所得控除の計算と手続きを実例で解説

退職金の税金は、思っているより軽いことが多い

退職金の金額が決まった瞬間、「ここから何割持っていかれるんだろう」と不安になる人は多いはずです。結論を先に言うと、退職金は給与や賞与とは別枠の「退職所得」として計算され、勤続年数に応じた大きな控除があり、さらに残額を2分の1にしてから課税されます。そのため勤続30年前後の会社員なら、退職金が1,500万円以下だと税金がゼロというケースも珍しくありません。この記事では、控除額の出し方、税額の計算手順、そして支給前に必ず出しておく一枚の書類について順番に説明します。

ステップ1:勤続年数を数える(1年未満は切り上げ)

計算の出発点は勤続年数です。ここは1年未満の端数をすべて切り上げます。30年1か月なら31年。たった1か月でも控除額が70万円増えるので、退職日を自分で選べる立場なら、入社日から何年何か月になるか一度カレンダーで確認しておく価値はあります。

ステップ1:勤続年数を数える(1年未満は切り上げ)

ステップ2:退職所得控除額を計算する

勤続年数から控除額を出します。

勤続年数退職所得控除額の計算式
20年以下40万円 × 勤続年数(80万円未満なら80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)

勤続年数ごとの目安は次のとおりです。

勤続年数控除額
10年400万円
20年800万円
25年1,150万円
30年1,500万円
35年1,850万円
40年2,200万円

障害が原因で退職した場合は、上記に100万円が加算されます。

ステップ3:課税される退職所得を出す

計算式はシンプルです。

(退職金の総額 − 退職所得控除額)× 1/2 = 課税退職所得金額

勤続38年・退職金2,000万円の人なら、控除額は800万円+70万円×18年=2,060万円。退職金が控除額を下回るので、課税所得はゼロ、税金もかかりません。

ただし2分の1が使えない例外があります。役員等で勤続5年以下の場合(特定役員退職手当等)は2分の1の適用がありません。役員以外でも勤続5年以下の場合は、控除後の金額のうち300万円を超える部分に2分の1が使えません。

ステップ4:所得税と住民税を計算する

勤続30年・退職金2,500万円のケースで具体的に追ってみます。

ステップ4:所得税と住民税を計算する

項目計算金額
退職所得控除800万円+70万円×10年1,500万円
課税退職所得(2,500万−1,500万)×1/2500万円
所得税500万×20%−42.75万57万2,500円
復興特別所得税所得税額×2.1%約1万2,000円
住民税500万×10%50万円
合計約108万円

2,500万円に対して約108万円。実効負担は4%台です。他の所得と合算されない分離課税なので、給与が高い人でも税率が跳ね上がりません。

ステップ5:「退職所得の受給に関する申告書」を必ず出す

手続きで一番大事なのがこれです。勤務先から渡される「退職所得の受給に関する申告書(兼 退職所得申告書)」に、氏名・住所・勤続期間・過去4年内(DC一時金がある場合はさらに長期間)の退職金受給歴を書いて、支給日までに会社へ提出します。記入自体は10分もかかりません。

出し忘れると控除が考慮されず、退職金の全額に対して一律20.42%が源泉徴収されます。2,000万円なら約408万円。取られっぱなしにはならず確定申告で取り戻せますが、還付されるのは翌年です。ここでの失敗が実務上いちばん多いので、退職手続きの書類束の中から探し出して先に片づけておくことをおすすめします。

ステップ6:確定申告が必要かを判断する

申告書を提出していれば源泉徴収で課税関係は完了し、原則として確定申告は不要です。ただし次の場合は申告したほうが有利、または必要になります。

ステップ6:確定申告が必要かを判断する

  • 申告書を出し忘れて20.42%引かれた(還付のため必要)
  • 退職した年の給与が少なく、医療費控除や社会保険料控除などが使い切れていない
  • 同じ年に複数の会社から退職金を受け取った

なお、退職所得は損益通算や配偶者控除の判定に影響する場面もあるため、他に大きな所得がある年は税理士や税務署に確認したほうが確実です。

注意したい点:iDeCo・企業型DCとの受け取り順

退職金とiDeCoの一時金を両方受け取る人は、受け取る順番と間隔で控除額が変わります。従来はDC一時金を受け取ってから5年空ければ退職金側の控除が満額使えましたが、2026年1月1日以後に支払われるDC一時金からは、この期間が実質10年に延長されました(いわゆる10年ルール)。逆に退職金を先に受け取ってからDC一時金を受け取る場合は、従来どおり19年内の重複調整が入ります。

正直なところ、この順番の最適化で数万円しか変わらないなら、生活設計を曲げてまで合わせる必要はないと思います。差が数十万円規模になりそうなら、受給前に金融機関や税理士に試算してもらう価値があります。制度は改正が続いている分野なので、実際に受け取る直前に国税庁のタックスアンサーで最新の取扱いを確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 退職金が控除額より少ない場合、確定申告はいりませんか?

A. 課税される退職所得がゼロになるため、原則として確定申告は不要です。ただし退職した年の給与が少なく所得控除が余っている場合は、申告することで源泉徴収された給与分の税金が還付されることがあります。

Q. 勤続年数に育休や休職の期間は含まれますか?

A. 原則として、勤務先に在籍していた期間は勤続年数に含めて計算します。ただし会社の退職金規程や長期欠勤の扱いによって判断が分かれる場合があるため、人事担当部署に自分の勤続期間を確認してください。

Q. 退職金を年金形式で受け取ると税金はどうなりますか?

A. 年金形式で受け取る分は雑所得となり、公的年金等控除の対象になります。退職所得控除は使えない代わりに毎年の所得として分散されるため、どちらが有利かは金額と他の所得によって変わります。

まとめ

退職金は勤続年数に応じた退職所得控除と2分の1課税で大きく軽減されるため、まず控除額を計算し、支給日までに「退職所得の受給に関する申告書」を提出することが最も重要です。