配当金の入金明細を見て「思っていたより少ない」と感じたことはありませんか。米国株の配当は、米国と日本の両方で税金が引かれているからです。

この記事では、米国株の配当にかかる税金の内訳、二重課税を調整する外国税額控除の仕組み、確定申告で実際にどこに何を入力するか、そして申告しても意味がないケースまでを順に説明します。数字は具体例で追いかけます。
配当金から引かれている税金の内訳
日本の居住者が米国株の配当を受け取ると、まず米国で10%が源泉徴収されます。日米租税条約により、本来の30%ではなく10%に軽減されている税率です(証券会社経由でW-8BENを提出済みであることが前提)。
その残額に対して、日本で20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)が課されます。
配当100ドルの場合の流れは次のとおりです。
| 段階 | 税額 | 残り |
|---|---|---|
| 配当総額 | ― | 100.00ドル |
| 米国の源泉徴収10% | 10.00ドル | 90.00ドル |
| 日本の課税20.315% | 18.28ドル | 71.72ドル |
手取りは約71.7ドル。実質的な負担率は約28.3%です。この米国分の10ドルを取り戻す(正確には日本の税金から差し引く)手続きが外国税額控除です。
なお2027年1月から復興特別所得税の一部が防衛特別所得税に振り替わる予定ですが、合計税率20.315%は変わらない見込みです。適用時期の詳細は国税庁の最新情報を確認してください。
ステップ1:申告する価値があるか先に判断する
全額が戻るわけではありません。所得税から差し引ける上限は次の式で決まります。

控除限度額=その年の所得税額×(国外所得総額÷所得総額)
つまり国外所得(米国配当など)が総所得に占める割合が小さいほど、控除できる枠も小さくなります。会社員で配当が年1万円程度なら、還付額は数百円から千円台にとどまることも珍しくありません。
率直に言えば、配当が年数万円以下なら申告の手間に見合わないことがあります。無理にやらなくてよい領域です。ふるさと納税や医療費控除でどのみち確定申告をするなら、ついでに入力する価値は十分あります。
ステップ2:書類を集める
準備するのは主に3点です。
- 特定口座年間取引報告書(証券会社のサイトから電子交付でダウンロード)
- 外国所得税額が分かる書類(配当金支払通知書、または年間取引報告書の外国所得税欄)
- 給与所得の源泉徴収票(会社員の場合)
外国税額は円換算が必要ですが、国内証券会社経由なら年間取引報告書に円建てで記載済みのことがほとんどです。ここで海外口座を使っていると、支払日ごとの為替レートで自分で換算する必要があり、一気に面倒になります。
ステップ3:確定申告書に入力する
国税庁の確定申告書等作成コーナーを使う場合、大きく2か所を入力します。

- 配当所得の入力:年間取引報告書の内容を転記し、総合課税か申告分離課税かを選ぶ
- 税額控除の画面で「外国税額控除」を選び、国名(アメリカ合衆国)、所得の種類(配当)、税種目、納付確定日、外国所得税額を入力する
慣れていれば入力自体は30分ほどです。時間がかかるのは書類集めのほうです。
課税方式の選び方は次のように整理できます。
| 課税方式 | 外国税額控除 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 申告分離課税 | 使える | 株式の譲渡損失と損益通算したい人 |
| 総合課税 | 使える | 課税所得が低く、所得税率が低い人 |
| 申告不要 | 使えない | 手間を避けたい人、扶養の判定に影響させたくない人 |
つまずきやすい注意点
- NISA口座の配当は日本で非課税のため、外国税額控除は使えません。米国の10%は取り戻せず、そのまま負担になります。
- 配当控除は日本の内国法人からの配当が対象で、米国株には適用されません。総合課税を選べば有利になるとは限りません。
- 申告すると合計所得金額が増え、配偶者控除や国民健康保険料の判定に影響する場合があります。
- 控除しきれなかった額は、住民税側での控除や、翌年以降3年間の繰越の対象になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 特定口座(源泉徴収あり)でも確定申告は必要ですか?
A. 外国税額控除を受けるには確定申告が必要です。特定口座では国内の税金は完結していますが、米国で引かれた分は自動では調整されません。
Q. 米国ETFの分配金も対象になりますか?
A. 米国で源泉徴収された外国所得税がある分配金であれば対象です。ただし国内籍の投資信託は仕組みが異なり、二重課税調整制度で自動調整される場合があるため、交付される報告書の記載を確認してください。
Q. 何年分までさかのぼって申告できますか?
A. 還付申告は対象となる年の翌年1月1日から5年間可能とされています。過去分をまとめて出すこともできますが、年ごとに書類が必要です。適用条件は国税庁の最新情報を確認してください。
まとめ
米国株の配当は米国10%と日本20.315%で実質約28%課税されるため、確定申告で外国税額控除を使えば米国分の一部または全部を取り戻せますが、控除限度額と手間を見比べて判断するのが現実的です。